緑のハートに火がついて
先月Jリーグの試合を観戦しに行ってきた。地元のクラブとぼくが子供の頃から贔屓にしているクラブとの試合。
電車とバスを乗り継いで郊外にあるスタジアムへ向かう。その道すがら試合のことを思い静かにテンションを上げていく。きれいな女の人もガサツなおじさんも気にならない。
スタジアムに着くと地元クラブのユニフォームを着たたくさんの人。ホームなのにアウェイ。嫌いじゃないぜ、この感じ(ふふふ)、などと気持ちの悪いことを考えながら座席へ。今回はメインの二階席からの観戦にしたので周りは敵だらけ。嫌いじゃな(略)。
しばらくするとスタメンが発表され両チームの選手が試合前のウォーミングアップに出てくる。ぼくは贔屓クラブの選手たちの動きをつぶさに観察した。「あいつは体が軽そうだ」「おい、そんなミス試合ですんなよ」などと思いながら。因みに集中しすぎて写真を撮るのを忘れ、帰宅してめちゃくちゃ後悔した。
お昼過ぎ、試合がはじまる。
選手たちが走り、蹴り、競る。ベンチからの声。そしてサポーターの歌声。スタジアムは暑さのせいだけじゃない熱を帯びる。ファールに対するブーイングや、いいプレーをした選手への拍手と個人チャント(応援歌)がそれに色を着け足していく。ぼくもつまらないミスをした選手に心の中で「おい、なにやってんだ!!」と憤ってみたりする(周りが敵だから)。
ハーフタイム、空腹をハンバーガーで癒し後半の試合展開を妄想する。汗だくだったがコンコースを吹き抜ける風が気持ちよかった。
後半、熱は更に上がっていく。内容自体は両チームともに決定的な場面は作れないもののそれでもバチバチとやり合う姿には迫力がある。このままスコアレスもありえるかと思ったそのとき、贔屓クラブが彼ららしい形で得点を決めた!興奮の瞬間!!数は少ないながらもここぞとばかりに歌い叫ぶサポーター。ぼくは敵陣でひとり小さくガッツポーズをする。口にタオルを当て「っしゃああああああ!!」と叫んだ。
その後は必至で反撃に出る地元クラブの攻撃をなんとか凌ぎ、贔屓クラブが1-0で勝利した。
試合の後のスタジアムでは低調な出来に終始した地元クラブのサポーターが居残り。険悪な空気だった。そんな中を意気揚々と引き揚げるのは正直気持ちがいい。帰宅すれば地元クラブのことも当然心配になるが試合直後は喜びが勝る。
贔屓クラブ、つまりヴェルディのこと。これまで何度か地元クラブのサポーターになろうと思ったことがあった。その方が幸せだしサッカーファンのあるべき姿だと思うからだ。
だけど無理だった。ニュースや雑誌で気になるのはいつもヴェルディの記事。考えないようにしてもサッカーに関わるものを目にするといつの間にかヴェルディのことを考えていた。なんだか安っぽい恋愛ドラマのセリフのようだが実際のところそうなのだからしょうがない。
子供の頃の強烈な思い出とヴェルディというクラブに漂うロマン。そう、ヴェルディにはロマンがある。たぶんぼくはそれにヤラれてる。ドリブル小僧や意表を突くスルーパス、鮮やかなワンツー。ぼくがアツくなれるのは緑のユニフォームだ。
今週のお題「私がアツくなる瞬間」
ぼくは宇宙刑事
普段ぼくはあまり着るものや身につけるものにこだわりがない。勿論自分が気に入ることが大前提だが、基本的にはその辺に売ってるものを適当に着ている。高くても安くてもどっちでもいい。まあ、高いものは滅多に買えないけどね。
あ、でも二つほど気にすることがある。それは「ある程度長く使えること」と「気軽さ」だ。
なぜ長く使えるものがいいかというとぼくが面倒臭がりだからだ。十代の頃からぼくは服屋があまりすきじゃない。疲れるんだ。これはアパレル関係でバイトしてた頃も変わらなかった。だから服屋に行くのはすごく面倒。ならばある程度普遍的というか定番なものを長く着るほうがいい。やらなくていい面倒はやらないということだ。
そして気軽さ。気軽に身につけられるものはいい。例えば今ぐらいの季節、汗っかきのぼくは日中よく顔を洗う。そりゃもうじゃぶじゃぶと。そんなとき服の袖が濡れたりする。こういうときに気を遣わなくていい服がいい。これもまたぼくの面倒臭がりな性格がよく出てる。ちょっと気遣えばいいだけなんだけどそれがなかなかのストレスだったりするんだ。
だからロンTやらカットソーやらは気軽に着れる価格のものがいい。パーカーとかもね。
で、実はここからが本題。前まで使ってた時計のガラスが傷ついたから新しい時計を買った。これ↓
CASIOの廉価な時計。巷ではチープカシオ略してチプカシなんて呼ばれてるやつ。
1~2年前に某ネット記事を見て欲しくなったけど当時はまだ新しい時計を買う必要がなかったから見送ってたんだよね。それをこの機に買いました!まあ1000円しないんだけどね(笑)
これがいいんだ。気分は宇宙刑事。決してテロリストではない。絶妙なダサさに妙な懐かしさと愛着が湧く。機能だってぼくが仕事で使う分には十分すぎるぐらい。もちろんとても気軽だ。生活防水つきだから前述した顔を洗うときだって腕につけたままでOK!ひゃっほう楽だぜ!
いかん、テンションがおかしい。
Instagramで検索するとたくさんの写真が出てくる。いろんな種類があって見てるだけで楽しい。シャレオツな人種の皆さんの写真も多いんだけど、夫婦でつけてたりお母さんと子どもでつけてたり、なんだかほっこりするものもあっていいんだよね。
ヒア・カムズ・ザ・サン 東京バンドワゴン
春といえば、桜に新生活にと様々だけど忘れてはならないものがもう一つ。毎年この季節の終わりに届く愛すべき家族の物語。〈東京バンドワゴン〉シリーズの最新作『ヒア・カムズ・ザ・サン 東京バンドワゴン』がやってきましたよ!
新刊が出てサチさんの家族紹介がはじまると毎回「いや~、やっぱいいなぁ」なんて思いながら物語の世界の住人になっていく。いつものようにこっそり、サチさんと同じ目線で堀田家(とその周囲の人々)のあれこれを覗き見る。
今回も幽霊騒ぎに悲しい別れ、新しい出会いに蔵の中身を巡る攻防、研人の受験に花陽の啖呵と、もう盛りだくさんすぎ!あ、いつもこんな感じか(笑)
いつもは季節ごとに内容を振り返っていくんだけど最近「これって微妙じゃないか」と思えてきたので今回はやめてみようと思います。
玉三郎とノラ……!!最初のエピソードできちゃいましたね……。でも年を取っていく物語なんだから当然猫だってそうで、ちゃんと寿命があってそれを全うするんですね。すぐに新しい代の玉三郎とノラがきて堀田家の面々と同じように猫も世代交代。
研人の受験失敗は物語内のリアルタイムではじめてといっていいくらいの堀田家の人間の挫折な気がします。でね、この研人の気持ちがよくわかるんだ。ほとんどの男はかっこつけたい生き物でね、それが好きな女の子の前なら尚更かっこわるいとこなんて見せたくない。まあ、個人的にかっこつけられなくなったら男としてどうなんだってのも思うし。でも若い男っていうのはそのかっこつけたいって気持ちと自分の内面とのバランスがうまくとれなかったりして一人でテンパったり大変なんです。それがわかるから読んでて「わかるぜ、研人!」なんて一人で熱くなったり。
これは夏樹の話も似たような感じで、頑固に痩せ我慢して義理を重んじるって男としてかっこいいんですよ。ぼくなんか全然だめだけど(笑)
そういうかっこいい男になる過程でこういうことってあるよねっていう。今のところ「かっこいい度」では研人より花陽の方が上だけどね(笑)
芽莉依ちゃん可愛いし甘利くんと渡辺くんいい奴だし研人は大丈夫だ!
裕太くんの彼女がすごくタイプだ。ぼくにください!っていうぐらい(笑)
実はタイトルを聞いたときから何度も〈Here Comes The Sun〉のメロディが頭の中で流れて止まらなかった。ビートルズの曲の中でも上位に入る好きな曲なんです。毎回どのビートルズソングがタイトルになるんだろうと妄想するのも楽しみだったり。
は~、この世界は素晴らしい。世界が優しさでできているような気がしてくるもの。少しだけ優しくなれるもの。
間抜けな盗賊団
気づいたら思い出話ばかりしている気がするこのブログ。「それでいいのか」なんて思いながら今回も小学校時代の思い出話。
小2の頃、ぼくには仲のいい友達が二人いた。さわたにくんといばくん(ちなみに二人とも仮名)だ。さわたにくんは長身ですらっとした足の速いやつ。いばくんはぽっちゃり気味でおっとりした吃音症のやつ。そして中くらいの背で特に取り柄のないぼく。その三人でいつもつるんでいた。今思い出すと漫画みたいな三人組。
遊んだりケンカしたり、本当に毎日一緒だった。お互いの好きな女の子も知ってたぐらい仲がよかったんだ。
いつものように秘密基地で遊んでいたとき、さわたにくんが言った。
「なあ、盗賊団を組まん?」
その提案に驚くぼくといばくん。前の日の夜さわたにくんはなにかのビデオを見たらしい。しかし「盗賊団」という言葉はとても甘い響きをもってぼくらの頭に入ってきた。その想像を掻き立てる甘美な言葉に抗えずぼくらは提案に乗った。その場でぼくら三人は盗賊団として決して仲間以外にこのことを口外すまいという誓いを立てた。本当は団の名前も決めたかったがそれはなかなか意見がまとまらず次回に持ち越した。
その日の夜、ぼくはなかなか寝付けなかった。ドキドキするようなワクワクするような感覚。自分はただの小学2年生ではなく盗賊なんだ。しかも三人だけの秘密だ。他に知る人はいない。秘密の共有は他にもあったけど今回はちょっと違う。なんせ盗賊団だ。この上なく甘い響き、冒険の匂いがする。アラビアンナイトやらルパン三世やら。
男の子っていうのは冒険が大好きだ。
次の日からさっそくぼくら三人の盗賊団は活動をはじめた。最初の獲物はニワトリ小屋にあるエサ箱。今思い出すとなぜそんなものを選んだのかさっぱりわからない。
放課後、ニワトリの世話係の生徒が小屋を去るとぼくらは動き出した。校舎の壁に背を当ててアイコンタクト。素早く小屋に近づく。誰も見ていないがぼくら三人には目に見えない敵がいた。
いばくんが周囲を警戒しながらぼくとさわたにくんで小屋の入り口に取り掛かる。ここでぼくらは大きな失敗をしていることに気づく。鍵を持っていなかったのだ。
ニワトリ小屋の入り口には南京錠がかかっていた。以前鶏が盗まれたことがあったため結構頑丈なやつ。それは職員室の壁に他のいろんな鍵とともに掛けられている。そのことを忘れていたのだ。なんて間抜けな盗賊団だろう。
だけど三人とも自分たちの失敗を認めたくなかった。ぼくらは言い合った。
「ちっ、やられたな」
「ああ、まさか連中(仮想敵)がここまでとはな」
「出直すか」
「ああ、そうしよう」
「やつらが来る前に逃げるぞ」
「よしきた」
こんな感じで、自分たちの間抜けさを紛らわしつつ世界観を崩さないように細心の注意払って秘密基地へと向かった。
そこで作戦会議。しかし鍵を手に入れるためのいい方策が浮かばない。結局そっちは諦めて盗賊団の名前を決めることにした。
いくつかの適当な候補の中、決まったのは一番安易なものだった。
〈サイト団〉
それぞれの名字の最初の文字を合わせただけのものだ。それでも名前が決まると今日の失敗は忘れ俄然気持ちが上がる。ぼくらは再び有頂天になって互いに夢の冒険を語り合ったりした。
そうやって日は暮れていった。
まだまだ続く。
SOYやっ!
ぼくが小学生中学年の頃の話。ある日学校が終わって家に帰ると母さんがいた。台所に立って野菜をトントンと刻んでいたのだ。
「あらおかえり」
平然とした顔で言って料理の続きに取り掛かる母さんの後姿を見ながら、ぼくはその不思議な光景をぼんやりと眺めた。それというのも数年前からパートをはじめた母さんはぼくが帰る時間にはまだ家にいないのが普通だったからだ。ぼくが帰宅して一時間ぐらい経ってから帰ってくるのが当たり前になっていた。
自分の部屋で鞄を下ろしながらぼくは必死に考えた。「なんでいるんだ?」「仕事は?」「やめたのか?」ぐるぐるぐるぐる。
母さんがあまりに普通な感じでいるものだからなんだか「どうしたの?」とも聞けない。台所に戻り冷蔵庫からコーヒー牛乳を出して飲む。美味い!いや、そうじゃなくて。
ぼくがあまりにも隣でジロジロ見ていたせいか母さんは急に吹き出した。
「あんたそんなにじーっと見られたらお母さんごはん作れんやない」
そんなことを言われるとなんだかものすごく恥ずかしくなってぼくは居間に行くとテレビをつけた。当時クラスで流行ってたアニメ番組を観る。ぼくもすごくハマっていて夢中になっていた。
番組が終わるとやっぱり違和感がある。なんせ普段はいないはずの時間にいないはずの人がいるのだから。一人っ子のぼくは寂しいということもなく逆にその一人の時間が好きだった。なんだか自分の世界に侵入された気分になっていた。
自分の部屋に行き、普段はこの時間にはほとんどすることのない宿題をやる。集中できない。ベッドの横に転がった漫画雑誌を手に取る。数ページで断念。コップの中のコーヒー牛乳を飲み干し台所へ行く。
すると甘辛いような匂いがふわっと香った。蓋がしてあって中は見えないが一瞬で鍋の中身がわかった。鶏肉、こんにゃく、にんじん、その他諸々。好物の一つ、うま煮の匂い。ついつい顔が綻ぶ。もう一つの鍋では揚げ物。こちらも好物の手羽先餃子。タレに浸けられた肉が美味しそうな光沢を放つ。
もうなぜ普段いない母さんがいたのかなんてどうでもよくなる組み合わせ。たまらなくお腹が減る。そんな組み合わせ。
「ちょっと早いけどこれ揚がったらごはんにしょうか」
「うん!!」
ぼくはエサを前にした犬状態だったと思う。
テーブルに並んだのは、うま煮、手羽先餃子、豆腐とわかめの味噌汁、婆ちゃんちの糠漬け、それに炊き立てのごはん。ぼくは勢いよく掻き込む。なんせ育ちざかり。おかわりも一回じゃ済まない。それで育ってきたからっていうのもあるけど、ぼくは母さんの手料理、味付けが大好きだった。美味しいごはんを食べるのって最高に幸せだ。
無事完食して聞いた話によるとたまたまその日職場でトラブルがあって早く帰ってこれただけらしい。
甘辛い匂い。醤油の匂いっていうのはずるい。それだけでもいいし、他の調味料と混ざり合っても美味しい匂いを放つ。味噌も。
日本人には遺伝子レベルでその匂いが染みついてるんじゃないかってぐらい心を揺さぶられる。甘かったり辛かったり、超有能。
大豆って偉大だ。
今週のお題「調味料」