オール・ユー・ニード・イズ・ラブ 東京バンドワゴン
去年日本テレビ系でドラマ化されたことで知った人も多いだろうか。毎年春の楽しみ、1年に1度やってくる新刊の発売は風物詩的なものになってます。もう9冊目。でもこれからもずっと続いてほしい。そんなシリーズだ。
集英社のPR誌『青春と読書』で作者の小路さんとドラマでサチを演じた女優の加賀まりこさんの対談を先に読んでしまって、テンション上がりまくりの状態で読んだら、案の定語り手でもあるサチの声が加賀さんで再生されました(笑)
去年の『フロム・ミー・トゥ・ユー 東京バンドワゴン』が番外編だったからか、最初のサチさんによる導入の話を読んで、堀田家の朝食シーンがはじまるところで「きたきた!」と嬉しくなった(笑)
物語は春夏秋冬の季節を追って展開する連作短編のかたちで進む。
【秋】真っ赤な紅葉はなに見て燃える
生き方っていうのは人それぞれなんだけど、自分の生き方にどれだけ家族を巻き込むかって人による。特に自分の子供にどんな関わり方をするかっていうのは難しいだろう。不器用な人やうまくできない人だっている。だけどそこに愛があればいつかは伝わるのかもしれない。そんなことを思った。
【冬】蔵くなるまで待って
サチさんのロマンス疑惑にも平然としてる勘一がかっこいい。
そして藤島さんのバックグラウンドがまた一つ明らかになったわけだけど、ぼくはさして保守的な人間のつもりはないんだけど藤三に近い感覚を持ってた。実際に触れられるものから感じられる「匂い」みたいなものが大事というか、最終的にそれしか信用できないみたいな。
それにしても木島さんもやるね!仕事オンリーな男かと思ってた(笑)
【春】歌って咲かせる実もあるさ
「もう研人が中三かあ」なんてしみじみ思う自分がいる。次の話への伏線ありありですね。
すごく短い話だけど、これもやっぱり親子関係、家族愛について考えさせられる。
そして勘一さん、どうか驚かせないでください。あなたには生き続けててもらわないとこのシリーズ終わっちゃう!
【夏】オール・ユー・ニード・イズ・ラブ
少し恥ずかしい話、ぼくにも十代の頃やりたくてしかたないこと、それしか見えてないものがあった。それを巡って本当にいろんな人とぶつかった。そのときに話した人たちはみんな頭ごなしにぼくの考えを否定した。それで反発することしかしなかった。だからこの話の研人がすごく羨ましい。あんなふうにわかったうえで「お前の好きにしろ」って言ってくれる大人って凄い。今はあんな大人になりたいと思ってる。
そして「Lサイン!!」と最後に思いっきり食いつかせていただきました(笑)
今回は全体を通して家族愛、親子愛の多様性みたいなものがみえた。そして子供たちはぐんぐん成長していく。花陽は大人の女に近づいてるし、研人も十代の男の子らしい葛藤を抱えて、かんなちゃんと鈴花ちゃんはどんどん言葉が達者になってる。反対に大人たちは緩やかに立ち位置を変えたり変えなかったり。生きた物語だなって強く感じさせてもらいました。
他にもドラマに対するオマージュ(?)的なものとかもあったりで楽しかったなー。ニヤニヤしちゃったよ(笑)