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水を撒いてくれ!

とりとめない思考の垂れ流し、または備忘録

間抜けな盗賊団 2

ニワトリ小屋での失敗から数日後、ぼくら〈サイト団〉は再び作戦会議をした。鍵を手に入れる方法を考えたがいいアイデアが出てこない。教頭の机の後ろにある鍵を盗むのはそうとうに難易度が高い。それで出した結論は「ニワトリ係の生徒を抱き込むこと」だった。

 

同学年でニワトリ係の生徒は三人。少年野球をやっているはたくん、内気なよしのくんと学級委員のふじさわさんだ。

はたくんは今で言うリア充で爽やか少年、ぼくらとは合わないしこの作戦には不向き。

ふじさわさんは委員で堅物、ぼくらとは一年のときに男子女子一年戦争を繰り広げた猛者でとてもじゃないが抱き込めそうになかった。それに当時のぼくらにとって女子に頼みごとをするのはかっこ悪いことだった。

そこで目をつけたのがよしのくんだ。勉強も運動も特にできるわけではなくいつも静かでおっとりしている彼ならなんとかなるのではないかというのがぼくらの総意だった。

 

早速その日の放課後ニワトリ小屋を見張るぼくといばくん(さわたにくんは係の仕事だ)。よしのくんが一人になる瞬間を待つ。上級生と一緒に楽しそうに作業するよしのくん。やさしくニワトリを抱きかかえて小屋の掃除をする。彼はいいやつだ。そんないいやつの姿を見てぼくらは少しだけ心が痛んだ。だがしかし、やらなければならない。謎の使命感からぼくらは引けなかったのだ。

係の仕事が終わると生徒たちがそれぞれニワトリ小屋をあとにしだす。鍵は六年生が職員室に持っていくようだ。

ぼくらと同学年の三人はというと、はたくんは野球の練習があるからか上級生と一緒にダッシュで去っていった。残されたよしのくんとふじさわさんは小屋の前にしゃがんでニワトリを見ている。なんだかいい雰囲気だ。

ぼくらが物陰からその様子を見ているときさわたにくんが係の仕事を終えてやってきた。まずい、さわたにくんはふじさわさんが好きだった。

「なんやあいつら、二人でじっとニワトリなんか見てばかじゃねぇの」

そんなさわたにくんの小さな声など知らず二人はにこにことニワトリを見ている。

 

しばらくしてようやくふじさわさんが立ち上がった。よしのくんはまだ小屋の前にじっとしゃがんでいる。

「なあ、ニワトリっておもしれえの」さわたにくんがぶっきらぼうにたずねる。

突然上から降ってきた声によしのくんは驚いていた。ぼくらをみてなにを言えばいいかわからないみたいに黙った。そこにさわたにくんが追撃する。

「なあって!」

ちょっと怒ったみたいな声の理由は黙ってるよしのくんへの苛立ちだけじゃない。これはいかんと思ってぼくは二人の間に入った。

「サワ、そんなふうに言ったらだめやん。よしのくんごめんな」

さわたにくんは舌打ちして黙る。よしのくんは小さく「……うん」と呟き下を向いてしまった。ゆっくり話すためにぼくらは座って話すことにした。

 

 ぼくはあらかじめ考えていた話をよしのくんにする。自分たちもニワトリに興味があること、触ってみたいことなどだ。話していくうちによしのくんの顔が明るくなっていった。

「それやったら中休みとかにみんなくるから一緒にくればいいよ」

そうよしのくんは言う。想定していた返し。

「でもほら、サワなんかこんなキャラやけん女子とかと一緒にやれんのよ。やから放課後こっそり触ってみたいんよ」

さわたにくんがちょっと乱暴者だとみんなに思われているのを利用した。

「よしのくんに協力してほしいんよ」真剣な顔でそう言う。「そっ、そうなんよ」どもりながらいばくんも真剣にうなずく。

「……でも」と呟くとよしのくんはみるみる困ったような泣き出しそうな顔になっていった。それを見てさわたにくんが爆発した。

「おまえなんなんか!女みたいにうじうじして!はっきりせぇよ!」

「ぅうぇ、ひぃ……」

とうとうよしのくんが泣き出した。ぼくらの作戦はまたも失敗に終わった。