水を撒いてくれ!

とりとめない思考の垂れ流し、または備忘録

恋バナ……ですか

 十四歳の頃の話。

 中二のぼくには恋人がいた。名前は〈ちーちゃん〉。
 こう書くと幼い感じがするけど実際は年上で高校生だった。

 彼女とは当時入っていたキリスト教系の寮で知り合った。数十人の男子と女子が別々の棟に暮らしていて、お互いに顔を合わせるのは事務室みたいなところと講堂だけって感じの寮。
 中学二年の秋、ぼくはそこの寮に入った。

 入ってすぐ、仲良くなったひとつ上の先輩がちーちゃんの友達と付き合っていて、その先輩の彼女から「ちーちゃんが君と付き合いたいって」と聞かされた。今思い出すととてつもなくシャイな告白だ。いや、奥ゆかしいと言っておこう。
 その話を受けた翌日、講堂で彼女と顔を合わせ、お互いに「よろしくお願いします」と頭を下げあってぼくらの関係は始まった。

 十年以上前の田舎の中高生だから、携帯なんかも持ってなくて、手紙をやりとりしたり、ほんの少しの時間講堂で話をしたり、そうやってぼくらは過ごした。とても楽しかったけど、それでもやっぱりぼくは好きな女の子と手を繋ぎたいし、あわよくばキスもしたかった。
 それが叶ったのは、クリスマスが近づいたある日のことだった。
 寮にあった小さな礼拝堂の裏の物置に二人でパイプ椅子を片付けにいったとき、片付けが終わってみんなのところに引き返そうとする彼女の手をとって、ごにょごにょ。
このときのことは自分の中でかなり美化されているけれど、たぶん実際はかなり焦っていたと思う。なんせ中二だから。

 他にもクリスマスの夜に一緒に手を繋いで花火を見たことや、プレゼントにあげた時計を「大事にするね」と喜んでくれたこととか、細かい部分は忘れてしまっていることも多いけど、覚えていることだってたくさんある。
 彼女がオトナだったこと、手が冷たかったこと、笑顔が綺麗だったこと、名字をいじると怒ること、彼女が素敵な人だったこと。

 さよならした(相当凹んだ)関係でも、思い出が美しいとかじゃなく、いろいろと特殊だったし、とても印象に残っている恋だ。
 あかん、これめっちゃはずい。

 

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今週のお題「恋バナ」