水を撒いてくれ!

とりとめない思考の垂れ流し、または備忘録

間抜けな盗賊団

気づいたら思い出話ばかりしている気がするこのブログ。「それでいいのか」なんて思いながら今回も小学校時代の思い出話。

 

小2の頃、ぼくには仲のいい友達が二人いた。さわたにくんといばくん(ちなみに二人とも仮名)だ。さわたにくんは長身ですらっとした足の速いやつ。いばくんはぽっちゃり気味でおっとりした吃音症のやつ。そして中くらいの背で特に取り柄のないぼく。その三人でいつもつるんでいた。今思い出すと漫画みたいな三人組。

遊んだりケンカしたり、本当に毎日一緒だった。お互いの好きな女の子も知ってたぐらい仲がよかったんだ。

 

いつものように秘密基地で遊んでいたとき、さわたにくんが言った。

「なあ、盗賊団を組まん?」

その提案に驚くぼくといばくん。前の日の夜さわたにくんはなにかのビデオを見たらしい。しかし「盗賊団」という言葉はとても甘い響きをもってぼくらの頭に入ってきた。その想像を掻き立てる甘美な言葉に抗えずぼくらは提案に乗った。その場でぼくら三人は盗賊団として決して仲間以外にこのことを口外すまいという誓いを立てた。本当は団の名前も決めたかったがそれはなかなか意見がまとまらず次回に持ち越した。

 

その日の夜、ぼくはなかなか寝付けなかった。ドキドキするようなワクワクするような感覚。自分はただの小学2年生ではなく盗賊なんだ。しかも三人だけの秘密だ。他に知る人はいない。秘密の共有は他にもあったけど今回はちょっと違う。なんせ盗賊団だ。この上なく甘い響き、冒険の匂いがする。アラビアンナイトやらルパン三世やら。

男の子っていうのは冒険が大好きだ。

 

次の日からさっそくぼくら三人の盗賊団は活動をはじめた。最初の獲物はニワトリ小屋にあるエサ箱。今思い出すとなぜそんなものを選んだのかさっぱりわからない。

放課後、ニワトリの世話係の生徒が小屋を去るとぼくらは動き出した。校舎の壁に背を当ててアイコンタクト。素早く小屋に近づく。誰も見ていないがぼくら三人には目に見えない敵がいた。

いばくんが周囲を警戒しながらぼくとさわたにくんで小屋の入り口に取り掛かる。ここでぼくらは大きな失敗をしていることに気づく。鍵を持っていなかったのだ。

ニワトリ小屋の入り口には南京錠がかかっていた。以前鶏が盗まれたことがあったため結構頑丈なやつ。それは職員室の壁に他のいろんな鍵とともに掛けられている。そのことを忘れていたのだ。なんて間抜けな盗賊団だろう。

 

だけど三人とも自分たちの失敗を認めたくなかった。ぼくらは言い合った。

「ちっ、やられたな」

「ああ、まさか連中(仮想敵)がここまでとはな」

「出直すか」

「ああ、そうしよう」

「やつらが来る前に逃げるぞ」

「よしきた」

こんな感じで、自分たちの間抜けさを紛らわしつつ世界観を崩さないように細心の注意払って秘密基地へと向かった。

 

そこで作戦会議。しかし鍵を手に入れるためのいい方策が浮かばない。結局そっちは諦めて盗賊団の名前を決めることにした。

いくつかの適当な候補の中、決まったのは一番安易なものだった。

〈サイト団〉

それぞれの名字の最初の文字を合わせただけのものだ。それでも名前が決まると今日の失敗は忘れ俄然気持ちが上がる。ぼくらは再び有頂天になって互いに夢の冒険を語り合ったりした。

そうやって日は暮れていった。

 

 

まだまだ続く。