水を撒いてくれ!

とりとめない思考の垂れ流し、または備忘録

ヒア・カムズ・ザ・サン 東京バンドワゴン

春といえば、桜に新生活にと様々だけど忘れてはならないものがもう一つ。毎年この季節の終わりに届く愛すべき家族の物語。〈東京バンドワゴン〉シリーズの最新作『ヒア・カムズ・ザ・サン 東京バンドワゴン』がやってきましたよ!

 

ヒア・カムズ・ザ・サン 東京バンドワゴン

ヒア・カムズ・ザ・サン 東京バンドワゴン

 

 

新刊が出てサチさんの家族紹介がはじまると毎回「いや~、やっぱいいなぁ」なんて思いながら物語の世界の住人になっていく。いつものようにこっそり、サチさんと同じ目線で堀田家(とその周囲の人々)のあれこれを覗き見る。

今回も幽霊騒ぎに悲しい別れ、新しい出会いに蔵の中身を巡る攻防、研人の受験に花陽の啖呵と、もう盛りだくさんすぎ!あ、いつもこんな感じか(笑)

 

いつもは季節ごとに内容を振り返っていくんだけど最近「これって微妙じゃないか」と思えてきたので今回はやめてみようと思います。

 

玉三郎とノラ……!!最初のエピソードできちゃいましたね……。でも年を取っていく物語なんだから当然猫だってそうで、ちゃんと寿命があってそれを全うするんですね。すぐに新しい代の玉三郎とノラがきて堀田家の面々と同じように猫も世代交代。

 

研人の受験失敗は物語内のリアルタイムではじめてといっていいくらいの堀田家の人間の挫折な気がします。でね、この研人の気持ちがよくわかるんだ。ほとんどの男はかっこつけたい生き物でね、それが好きな女の子の前なら尚更かっこわるいとこなんて見せたくない。まあ、個人的にかっこつけられなくなったら男としてどうなんだってのも思うし。でも若い男っていうのはそのかっこつけたいって気持ちと自分の内面とのバランスがうまくとれなかったりして一人でテンパったり大変なんです。それがわかるから読んでて「わかるぜ、研人!」なんて一人で熱くなったり。

これは夏樹の話も似たような感じで、頑固に痩せ我慢して義理を重んじるって男としてかっこいいんですよ。ぼくなんか全然だめだけど(笑)

そういうかっこいい男になる過程でこういうことってあるよねっていう。今のところ「かっこいい度」では研人より花陽の方が上だけどね(笑)

芽莉依ちゃん可愛いし甘利くんと渡辺くんいい奴だし研人は大丈夫だ!

 

裕太くんの彼女がすごくタイプだ。ぼくにください!っていうぐらい(笑)

 

 

実はタイトルを聞いたときから何度も〈Here Comes The Sun〉のメロディが頭の中で流れて止まらなかった。ビートルズの曲の中でも上位に入る好きな曲なんです。毎回どのビートルズソングがタイトルになるんだろうと妄想するのも楽しみだったり。

は~、この世界は素晴らしい。世界が優しさでできているような気がしてくるもの。少しだけ優しくなれるもの。

間抜けな盗賊団

気づいたら思い出話ばかりしている気がするこのブログ。「それでいいのか」なんて思いながら今回も小学校時代の思い出話。

 

小2の頃、ぼくには仲のいい友達が二人いた。さわたにくんといばくん(ちなみに二人とも仮名)だ。さわたにくんは長身ですらっとした足の速いやつ。いばくんはぽっちゃり気味でおっとりした吃音症のやつ。そして中くらいの背で特に取り柄のないぼく。その三人でいつもつるんでいた。今思い出すと漫画みたいな三人組。

遊んだりケンカしたり、本当に毎日一緒だった。お互いの好きな女の子も知ってたぐらい仲がよかったんだ。

 

いつものように秘密基地で遊んでいたとき、さわたにくんが言った。

「なあ、盗賊団を組まん?」

その提案に驚くぼくといばくん。前の日の夜さわたにくんはなにかのビデオを見たらしい。しかし「盗賊団」という言葉はとても甘い響きをもってぼくらの頭に入ってきた。その想像を掻き立てる甘美な言葉に抗えずぼくらは提案に乗った。その場でぼくら三人は盗賊団として決して仲間以外にこのことを口外すまいという誓いを立てた。本当は団の名前も決めたかったがそれはなかなか意見がまとまらず次回に持ち越した。

 

その日の夜、ぼくはなかなか寝付けなかった。ドキドキするようなワクワクするような感覚。自分はただの小学2年生ではなく盗賊なんだ。しかも三人だけの秘密だ。他に知る人はいない。秘密の共有は他にもあったけど今回はちょっと違う。なんせ盗賊団だ。この上なく甘い響き、冒険の匂いがする。アラビアンナイトやらルパン三世やら。

男の子っていうのは冒険が大好きだ。

 

次の日からさっそくぼくら三人の盗賊団は活動をはじめた。最初の獲物はニワトリ小屋にあるエサ箱。今思い出すとなぜそんなものを選んだのかさっぱりわからない。

放課後、ニワトリの世話係の生徒が小屋を去るとぼくらは動き出した。校舎の壁に背を当ててアイコンタクト。素早く小屋に近づく。誰も見ていないがぼくら三人には目に見えない敵がいた。

いばくんが周囲を警戒しながらぼくとさわたにくんで小屋の入り口に取り掛かる。ここでぼくらは大きな失敗をしていることに気づく。鍵を持っていなかったのだ。

ニワトリ小屋の入り口には南京錠がかかっていた。以前鶏が盗まれたことがあったため結構頑丈なやつ。それは職員室の壁に他のいろんな鍵とともに掛けられている。そのことを忘れていたのだ。なんて間抜けな盗賊団だろう。

 

だけど三人とも自分たちの失敗を認めたくなかった。ぼくらは言い合った。

「ちっ、やられたな」

「ああ、まさか連中(仮想敵)がここまでとはな」

「出直すか」

「ああ、そうしよう」

「やつらが来る前に逃げるぞ」

「よしきた」

こんな感じで、自分たちの間抜けさを紛らわしつつ世界観を崩さないように細心の注意払って秘密基地へと向かった。

 

そこで作戦会議。しかし鍵を手に入れるためのいい方策が浮かばない。結局そっちは諦めて盗賊団の名前を決めることにした。

いくつかの適当な候補の中、決まったのは一番安易なものだった。

〈サイト団〉

それぞれの名字の最初の文字を合わせただけのものだ。それでも名前が決まると今日の失敗は忘れ俄然気持ちが上がる。ぼくらは再び有頂天になって互いに夢の冒険を語り合ったりした。

そうやって日は暮れていった。

 

 

まだまだ続く。

SOYやっ!

ぼくが小学生中学年の頃の話。ある日学校が終わって家に帰ると母さんがいた。台所に立って野菜をトントンと刻んでいたのだ。

「あらおかえり」

平然とした顔で言って料理の続きに取り掛かる母さんの後姿を見ながら、ぼくはその不思議な光景をぼんやりと眺めた。それというのも数年前からパートをはじめた母さんはぼくが帰る時間にはまだ家にいないのが普通だったからだ。ぼくが帰宅して一時間ぐらい経ってから帰ってくるのが当たり前になっていた。

自分の部屋で鞄を下ろしながらぼくは必死に考えた。「なんでいるんだ?」「仕事は?」「やめたのか?」ぐるぐるぐるぐる。

母さんがあまりに普通な感じでいるものだからなんだか「どうしたの?」とも聞けない。台所に戻り冷蔵庫からコーヒー牛乳を出して飲む。美味い!いや、そうじゃなくて。

ぼくがあまりにも隣でジロジロ見ていたせいか母さんは急に吹き出した。

「あんたそんなにじーっと見られたらお母さんごはん作れんやない」

そんなことを言われるとなんだかものすごく恥ずかしくなってぼくは居間に行くとテレビをつけた。当時クラスで流行ってたアニメ番組を観る。ぼくもすごくハマっていて夢中になっていた。

番組が終わるとやっぱり違和感がある。なんせ普段はいないはずの時間にいないはずの人がいるのだから。一人っ子のぼくは寂しいということもなく逆にその一人の時間が好きだった。なんだか自分の世界に侵入された気分になっていた。

自分の部屋に行き、普段はこの時間にはほとんどすることのない宿題をやる。集中できない。ベッドの横に転がった漫画雑誌を手に取る。数ページで断念。コップの中のコーヒー牛乳を飲み干し台所へ行く。

すると甘辛いような匂いがふわっと香った。蓋がしてあって中は見えないが一瞬で鍋の中身がわかった。鶏肉、こんにゃく、にんじん、その他諸々。好物の一つ、うま煮の匂い。ついつい顔が綻ぶ。もう一つの鍋では揚げ物。こちらも好物の手羽先餃子。タレに浸けられた肉が美味しそうな光沢を放つ。

もうなぜ普段いない母さんがいたのかなんてどうでもよくなる組み合わせ。たまらなくお腹が減る。そんな組み合わせ。

「ちょっと早いけどこれ揚がったらごはんにしょうか」

「うん!!」

ぼくはエサを前にした犬状態だったと思う。

 

テーブルに並んだのは、うま煮、手羽先餃子、豆腐とわかめの味噌汁、婆ちゃんちの糠漬け、それに炊き立てのごはん。ぼくは勢いよく掻き込む。なんせ育ちざかり。おかわりも一回じゃ済まない。それで育ってきたからっていうのもあるけど、ぼくは母さんの手料理、味付けが大好きだった。美味しいごはんを食べるのって最高に幸せだ。

 

無事完食して聞いた話によるとたまたまその日職場でトラブルがあって早く帰ってこれただけらしい。

 

甘辛い匂い。醤油の匂いっていうのはずるい。それだけでもいいし、他の調味料と混ざり合っても美味しい匂いを放つ。味噌も。

日本人には遺伝子レベルでその匂いが染みついてるんじゃないかってぐらい心を揺さぶられる。甘かったり辛かったり、超有能。

大豆って偉大だ。

 

 

今週のお題「調味料」

あれから二十年

阪神淡路大震災から二十年ですね……。

 

当時ぼくはまだ小学生で、朝起きて母親が見てたニュースの映像を見て「なんだこれ?!」となったのを憶えています。

うちの両親はともに関西での生活が長かったので、相当な衝撃を受けたことでしょう。母は当時の友人知人に連絡をとってました。父は家にいなかったのでそのときの反応はわかりませんが。

なんとなくですが憶えているのは、母がいろんなところに電話している姿です。そのうち何本かは繋がって、何本かは繋がってなかったように思います。

 

地震発生当日からしばらくして父が家に帰ってきたときにもひと悶着ありました。

うちの両親は再婚同士なのですが、父の前妻の方と娘さんが被災したのです。ぼくはどちらにも会ったことがないのでどんな人たちなのかまったく知らないです。それは母も同じでした。そんな父の前の家族のために父はぼくの学費にと貯めていた貯金を母に無断で全額使ったのです。

これに母が激怒しました。普段からそんなに仲が良い夫婦ではなかったとは思いますがこれが更に溝を深めたのだと思います。そこからはもう……。人間はこんなに汚い言葉を吐くのかというほどの罵詈雑言とケンカでした。

 

今のぼくからすると父の気持ちもわかりますし、また母の気持ちもわかります。ですが当時の幼いぼくにはただケンカする両親を見てることしかできませんでした。そしてこれは現在の自分の人格形成に大きな影響を及ぼしたように思います。

両親のケンカにより、姉への興味が深くなったのもこの頃です。一人っ子だと思ってたぼくの頭の中で勝手に❝優しいお姉ちゃん❞というイメージが膨らんでいきました。そのお姉ちゃんが可哀そうでしかたなかった。完全なる妄想だけど。

 

中学以降何度か折に触れて父に未だ見ぬ姉(正直前妻については興味がない)のことを尋ねますが詳しいことはまったく話してくれません。最近はそれでケンカになるのが面倒なので話題にしないようにしていますが。

結果的に今だから言えることですが、あの震災はぼくの家族と僕自身の人格、現在の関係性に大きな影響を残したままです。

 

 

今週のお題「今だから言えること」

去年読んだ本の中でベスト10を決めたよ

まあ表題の通りです。実は年末にやろうと思っていたのですが、忙しさと体調不良、更に通信制限に見舞われて諦めました。

今回はそのリベンジというわけではないですが、年末年始の一区切りとして去年読んだ本の中でのベスト10を短い感想と共に書いていこうと思います。

※「去年読んだ本」なので去年発売された本とは限りません。

 

第10位 室積光小森生活向上クラブ』(双葉文庫)

これタイトルに反して結構ブラックで好きです。仕事でストレス溜まってる人はスカッとするだろうし、そうでもない人はただただ気持ち悪いっていう(笑)。個人的には単純に楽しめたのでOKです。

 

第9位 恒川光太郎『金色機械』(文藝春秋)

これはこのブログにも感想を書きました。その記事はこちら↓

 

金色機械 - 暮らしの記録

 

第8位 碧野圭『書店ガール3』(PHP文芸文庫)

書店を舞台にしたお仕事小説の第3弾。軽く読めてしまうようで実は多くの引っかかりがある作品です。今回は震災のことも書かれていた為、より入り込んでしまった。

 

第7位 佐々涼子『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』(早川書房)

東日本大震災被災した日本製紙石巻工場の復活に迫ったドキュメント本で読むのが苦しかった一冊。自分たちが普段読んでる本、その内容ではなく本という物自体について考えさせられる作品です。将来の中学生や高校生にも読んでもらいたい。

 

第6位 小島信夫『ラヴ・レター』(夏葉社)

正直文学史みたいなものには疎いぼくですが、なんだか「まあそんなに力みなさんな」といわれているような感覚、不思議な雰囲気を持った文体で書かれた小島作品は大好きです。作者の思考が頭に流れ込んでくるあの感じ、たまりません。

 

第5位 小野不由美『営繕かるかや怪異譚』(角川書店)

普段ホラーを読まないぼくが例外的に読むのが小野主上の作品です。なんせ文章が美しい。この作品もホラーの短編集ですから勿論怖いのですが、それ以上に想像を掻き立てる文章とそこから浮かんでくる風景の美しさに引き込まれました。更に表紙のイラストが『蟲師』の漆原さんというのも想像を掻き立てられます。

 

第4位 樋口毅宏『テロルのすべて』(徳間文庫)

共感できるのにイラつく主人公が核爆弾をアメリカに落そうとする話なんですが、まあ突拍子もないし突っ込みどころは多いんです。でも違和感を感じながら最後まで読み進めてしまいます。最終的にすっきりするわけでもないです。でもとてもとても引っ掛かる。刺さってくる。

 

第3位 白石一文『彼が通る不思議なコースを私も』(集英社)

この作品の感想を書こうとして何度もディスプレイにむかったもののその度に挫折してきました。というか白石作品の感想を書くのって難しいんですよ。今年もこの作品と『神秘』、文庫で出た『翼』(『愛なんて嘘』は未読)と読んだんですが、いざ感想を書くとなると難しい。ぐんぐん読めるのに。でも大好きな作品です。

 

第2位 椰月美智子『その青の、その先の、』(幻冬舎)

青春小説といっていいのだろうか。もう純度120%のキラッキラなんですが、それだけじゃない。胸に迫ってくるものがあります。主人公まひるの物事に対する感じ方、捉え方も好ましいし、友人や恋人のキャラクターもいい。彼女たちは正しい。そしてその正しさが眩しい。十七歳ってトクベツだ。

 

第1位 島田潤一郎『あしたから出版社』(晶文社)

これはもうダントツの1位。Twitterなんかでも熱く語ってしまったのですが、ほぼ自分語りで書いてしまった感想が下のリンクです。本当に気持ち悪い自分語りなので苦手な人は開かないでください。

あしたから出版社 - Come Rain Or Come Shine

これからずっと大切にするであろう作品に出会えて本当に嬉しいです。

 

 

さて、ベスト10といったものの順位なんてあってないようなものです。ここに書いた作品は全部よかったものなので。

本当はコミック部門なんかもできたらいいんでしょうが定番作品以外あまり読んでないので今回はやめておきます。あ、でもしいて挙げるなら田島列島さんの『子供はわかってあげない』が素晴らしかった。あれは何度も読み返すだろうなあ。Twitterの座談会参加したかった……。

今年はどんな本に出会えるだろうか。そんなロマンチックな感じで締めたいと思います。