水を撒いてくれ!

とりとめない思考の垂れ流し、または備忘録

金色機械

先日第67回日本推理作家協会賞を受賞した恒川光太郎さんの長編SF時代小説。時代小説とは書いたもののそれはほとんど気にならないぐらいSF色の方が強い作品だ。

 

触れるだけで生き物を死に至らすことができる女遥香、他人の嘘や殺意を見ることができる男熊悟朗、子供の頃に犯した罪を悔いて生きる男厳信、そして月からきたという異形のもの金色様。それぞれの過去と現在、生と死が入り乱れて進んでいく物語は圧巻。一気に読み進められる!びっくりしましたね。

 

ホラーが苦手なぼくは、恒川さんの作品はデビュー作の『夜市』以来読んでなかったんだけど、これから読むだろうな。それぐらい面白かった。

全体で200年ぐらいの長い時間の話なので長編になるのも納得。でも出だしからグッと引き込まれてしまった。

 

ただ最初金色様が登場したときにはスター・ウォーズのC3-POが浮かんでしまって、しばらくの間そこから離れられなかった(笑)だって金色のロボットっていったらやっぱりアレですもん。

 

この話の主役たちはみんな人殺しだ(厳信は微妙だけど本人はそう思ってる)。でもそれは単純な善悪の話ではなくて、それぞれが置かれた境遇において生きることと密接に関わってくる。

恒川さんが戦国から江戸という時代を選んだのも、その時代の方が現代より死との距離が近かったからなのかなと思ったり。

 

いくつもの人生が絡み合っていく様、終わりに向かって伏線が回収されていくにつれ、どんどん火が小さくなるような感覚があった。人によっては尻すぼみに感じるかもしれないけど、ぼくはそれが心地良かった。

 

最後の幕引きで解き放たれた魂は救われただろうか。